蔵の建て替え、母屋との繋がり

名古屋市千種区に伊勢湾台風を乗り越えた住宅がありました。「名古屋嫁入り物語」の撮影にも使われたと伺った母屋のたたずまいは 中京地区の昭和を品よく残し、いつまでも見ていられる時代を経たバランスの良さ。木造と古き良きを愛する建築家にとっては大好物でした。建築のサイズが日本人の体格だったのか少し小さく、でも手仕事は繊細。 ただし、ここの蔵や付属建物を解体し新築するにあたっては コンセプトの熟考が必要でした。

ヨーロッパの美術館の新館のように

中途半端に同じような家ではなく、思いっきりモダンデザインのほうがいいのではないか、とのお施主様のアイデアをいかし、ヨーロッパの古い建物に思いっきりモダンな新館がよりそう、たとえばルーブル美術館とその新館(大袈裟にいってしまいました;汗)のように 母屋や周りの環境があるから楽しめる家にしたいと思い設計プランを進めました。外観のデザインはシンプルモダンですが白い左官壁が日本家屋の黒い姿とマッチします。 またユニバーサルデザインの観点から車いす利用の可能性も考え、駐車場からリビングまで車いすスロープと手摺を設置しています。

周囲や空を見たいところだけ窓をセットし、光をブラインドと照明で楽しめます。

住宅性能と設備は最新基準に:エネファーム、循環風呂、耐震等級3

24時間循環風呂を設置しました。お施主様が別宅でご利用のため快適さをご存じで 私たち設計者側が安全性について教えていただきました。専門業者の定期的な管理があれば 清潔に快適に24時間お湯は循環します。 魔法瓶浴槽とかが流行っていますが、単純にずっとお湯が冷めないからいいのではありません。 ずっとお風呂のお湯を殺菌、浄化しているので、お風呂の掃除がいらないのです。この発想はありませんでした。 

そしてお風呂のお湯と床暖房をささえるのがエネファーム(家庭用燃料電池)です。

① 発電のしくみ 都市ガスから取り出した水素と、空気中の酸素を化学反応させることで発電します。
② 給湯のしくみ 発電時に発生する熱を利用して約60℃のお湯をつくり、設定温度になるよう水と混ぜて出湯します。貯湯タンクのお湯がたりない時や、お風呂の追いだきはバックアップ熱源機で加熱します。

レジリエンスとして使えることは停電発生時にエネファームが発電している場合は、発電を継続して専用コンセントから電気を供給できること。専用コンセントへの接続により、停電時もつかえます。貯湯の水も確保できますし、ガスでつくった水素で発電し、災害時にも強いので採用となりました。

エネファームは家庭用燃料電池コージェネレーションシステムとも呼ばれ このコージェネレーションシステムは、発電し、同時に発生する熱を回収して有効利用するシステムです。エネファームが供給する熱をうまく利用することで、家庭でのエネルギー自給率を高めることができます。

耐震等級3を吹き抜けのあるリビングで実現するため、許容応力度計算により各所に構造上の工夫が隠れています。また暖かい家にして気密性を保つために 吹付断熱材を利用し、屋根下には通気層が設けられています。

家具、カーテン、外構、照明、家電をトータルで選定。ミニマリストの家?

当然 造作家具(TVボード、テーブルなど)は設計をお任せいただいたのですが、椅子、ベット、ソファからカーテン照明、家電品、外構の選定をすべてお任せいただきました。照度、色の強弱バランスを最初から想定しているので、インテリアデザインが人の生活の邪魔にならない、控えめに感じる落ち着いた空間になりました。ミニマリストの家のごとくすっきりしています。